吉岡幸雄

人が美しい色を求め続けるのはなぜだろうか。 自然とひたすら向き合う仕事にたずさわってから、私は、人が古来より美しいものに憧れ求め続けてきたのは、眼に映ずる自然の移ろいを身近に引き寄せたいと願うからであると、確信するようになってきた。 たとえば朝、太陽を拝する。その光に照らし出された山や野の万緑が輝き、海や川の水は天を映して碧く澄む。季の花が鮮やかな彩りをそえる。 そうした自然の一瞬の姿、花のひとひら、風に揺れる枝葉の表裏に、木の実の色と形に、人々は魅せられて、それらにゆかしい名をつけるようになっていった。